手すりは大きく2種類(縦と横)
手すりは、支えたい動作によって向きが変わります。大きく分けると次の2つです。
- 縦手すり(垂直に付ける手すり):主に「立ち上がる」「座る」「段差をまたぐ」ときに使います。体を上に引き上げたり、バランスを取ったりするのに向いています。
- 横手すり(水平に付ける手すり):主に「歩く」「横に移動する」ときに使います。廊下を伝って歩くときなど、進む方向に沿って体を支えるのに向いています。
つまり、立ち座りが中心の場所には縦、移動が中心の場所には横、というのが基本の考え方です。実際には縦と横を組み合わせたL字型の手すりもよく使われます。トイレや浴室など、立ち座りと移動の両方がある場所で活躍します。
向きを取り違えると、せっかく付けても力が入れにくくなります。「ここでは何の動作を支えたいのか」を先に考えると、向きが決めやすくなります。
高さ・位置の目安と注意点
よく聞かれるのが高さです。横手すり(歩行を支える手すり)の高さは、一般的な目安として床からおおむね75〜85cm程度と言われることがあります。ただし、これはあくまで目安です。使う人の身長・腕の長さ・姿勢・どう動くかによって、ちょうどよい高さは変わります。数字だけを頼りに決めるものではない、とお考えください。
縦手すりは「高さ」というより「立ち上がる動作に合う位置」で決めます。座った姿勢から立つとき、自然に手が伸びて力を入れやすい場所はどこか。前すぎても横すぎても踏ん張りにくくなります。これも体格や立ち方によって変わります。
確実なのは、ご本人に実際にその場で立つ・座る・歩く動作をしてもらい、手が無理なく届いて力を入れやすい位置を一緒に探すことです。手の位置を仮に当てて確かめてから取り付け位置を決めると、合わないリスクを下げやすくなります。可能であれば、理学療法士・作業療法士・ケアマネジャー・施工業者などに現地で動作を見てもらえると安心です。
場所別の付け方の例
ご家庭で手すりが役立つ代表的な場所と、支えたい動作の例です。実際にどう付けるかは、その場所でのご本人の動きに合わせて変わります。
- 玄関(上がり框):靴の脱ぎ履きや段差の上り下りで使います。立ち座りと段差越えがあるため、縦手すりやL字型が向くことが多い場所です。
- トイレ:便座への立ち座りで使います。立ち上がりを支える縦手すりや、立ち座りと移動を兼ねるL字型が候補になります。
- 浴室:出入り口の段差、浴槽のまたぎ、洗い場での立ち座りなど、動作が多い場所です。濡れて滑りやすいので、握りやすさと位置がとくに大切です。
- 階段:上り下りを支えます。進む向きに沿って横手すりを連続して付けるのが基本です。
- 廊下:歩いて移動するための横手すりが向きます。
このように、同じ「手すり」でも場所ごとに役割が違います。家全体を一度に考えるより、「どの動作で困っているか」から優先順位を付けると検討しやすくなります。
よくある失敗
実務の中でよく見聞きする、手すりの「もったいない付け方」です。
- 高さや向きが本人に合っていない:目安の数字だけで決めてしまい、いざ使うと力が入れにくいケースです。動作を見て決めるのが確実です。
- 利き手と反対側に付けてしまう:力を入れやすい側は人によって違います。どちらの手で支えたいかを確認しないと、使いにくくなります。
- 握りにくい素材を選ぶ:冬に冷たい、濡れると滑る、太すぎて握れない、といった素材の問題です。握りやすさも忘れずに確認したい点です。
- 縦と横を取り違える:立ち座りの場所に横手すり、移動の場所に縦手すり、と逆になってしまう例です。
なお、「置くだけ」「突っ張り式」の手すりは、工事をしなくても使えて手軽です。ただし、介護保険の「住宅改修」で補助の対象になるのは、工事をともなう取り付けが基本です。どんな工事が対象になるかは 介護保険で使えるリフォーム・使えないリフォーム で詳しくまとめています。手すり以外のよくある失敗は よくある失敗例 も参考になさってください。
まとめ
手すりは「どこに付けるか」だけでなく、「その人の動作に合っているか」が後悔を分けます。立ち座りには縦、移動には横が基本で、高さや位置に決まった正解はなく、使う人によって変わります。だからこそ、ご本人が実際に動く様子を見て決めるのがいちばん確実です。
迷ったときは、理学療法士・作業療法士・ケアマネジャー・施工業者に現地で見てもらうことをおすすめします。実際に工事をお願いする際は、動作を見て提案してくれる業者かどうかも大切です。業者選びについては 失敗しない介護リフォーム業者の選び方 をご覧ください。
※この記事は一般的な情報をまとめたものです。お一人おひとりの体の状態や介護・医療的な判断は、主治医・ケアマネジャー・地域包括支援センター等にご相談ください。介護保険・補助金などの制度や金額は変わることがあるため、最新はお住まいの市区町村でご確認ください。